交通事故における参考裁判例(右左折における過失修正要素としての「徐行なし」)~横浜地方裁判所令和6年7月4日判決
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【実務における過失割合の判断のしかた】
実務上、交通事故における双方当事者の過失割合にあたっては、
「別冊判例タイムズ39」という書籍が参照されることが多いです。
稲葉弁護士としては、
このように、特定の書籍を「当然の前提」として過失割合を定める方法が本当に妥当なのか、
交通事故は、千差万別なのではないのかとの疑問を持っていますが、
実際の裁判においては、
この事故は、
・別冊判例タイムズ39の「○○」図に該当する。
そして、
・「○○」図の定める「○○」という過失修正要素がある。
よって、
「原告(被告)の基本の過失割合は○%であるところ、○%修正されて、○%となる」
といったように、争われることが非常に多いです。
そして、裁判官も、そのような考え方を前提に、過失割合を判断していると考えられることが、
少なくとも、稲葉弁護士の経験上では、ほとんどです。
【過失割合:右左折における過失修正要素としての「徐行なし」とは?】
ここで、別冊判例タイムズ39では、
四輪車どうしの事故、単車と四輪車との事故、自転車と四輪車・単車との事故における「過失割合の判断」において、
右左折車に「徐行」がない場合を、過失割合を右左折車に不利に修正する要素としていることが多くあります。
では、ここでいう「徐行」とはどの程度の速度をいうのでしょうか?
【別冊判例タイムズ39ではどうなっているか?】
別冊判例タイムズ39は、43頁の解説で、
「徐行」について、「裁判例としても、時速10㎞以下と解するのが大勢のようである」とした上で、
「右左折における修正要素としての『徐行』は、右左折車としての通常の速度を意味し、必ずしも法律上要求される徐行・・・でなくてよい」
と説明しています。
とすると、具体的な場合によるのでしょうが、
「時速10㎞以下」までは必要ないように思えます。
しかし、この説明では、具体的にどの程度の速度が「徐行なし」として、過失割合を修正させるのかは判然としません。
【横浜地方裁判所令和6年7月4日判決~「時速約20キロメートル」の右折でも「徐行なし」とはいえないとした裁判例】
上記判決(蛭川明彦裁判官)は、
神奈川県鎌倉市付近の交差点を、
長谷方面から藤沢方面に直進で通過しようとした普通自動二輪車と、
藤沢方面から鎌倉山方面に向けて右折した普通乗用自動車が衝突した交通事故において、
普通乗用自動車の右折時の速度を「時速約20キロメートル」と認定した上で、
「徐行なし」とは認められない旨、判断しています。