店舗内事故における責任認定にあたり参考となる裁判例(責任否定の逆転判決)~東京高等裁判所令和3年8月4日判決(天ぷら事件)
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【店舗内の通路や床面で滑って転倒した事故の責任】
交通事故ではありませんが、日常生活で起こる事故のうち、比較的発生件数の多いものとして、
「店舗内の通路や床面で滑って転倒した事故」
があります。
店舗側がきちんと清掃等をしていれば事故が起きなかったとも思える反面、
足元に気を付けていればよかったのではないか、そこまで店舗側は注意しなければならないのか、
とも思えます。
この点、どの程度の事情があれば、裁判所は、店舗側に責任を認めているのでしょうか?
【東京高等裁判所令和3年8月4日判決(天ぷら事件)~責任否定の逆転判決】
スーパーマーケットの利用客が、店舗のレジ前通路で、床に落ちていた、かぼちゃの天ぷら(約13cm×約10cm)を踏んで転倒し、傷害を負った事案です。
天ぷらが原因となったので、ここでは、便宜的に、天ぷら事件と呼びます。
東京高等裁判所は、この事件において、
「本件天ぷらは、本件事故に近接する時点に落ちたものである可能性が高」い、と認定した上で、
・消費者庁が店舗内の転倒事故に関して発出した文書によると、店舗内の床滑りによる転倒事故は、雨天時や水を使う場所の床濡れによるものが大半を占めており、落下物が原因となる場合も、青果物売場において、野菜くず等を踏みつけたときに滑ることが想定されているものの、レジ付近の通路は落下物による転倒事故が発生しやすい場所として挙げられていない。
・レジ前通路を通行する利用客からは見通しがよく、足下の落下物を回避することは特に困難なことではなかった。
・レジ内の従業員にとって、レジ前通路の床は、レジ台等の死角になるため視認することができない部分があり、そうでなくても、本件事故が発生した時間帯に、レジ内の従業員がレジ打ちの作業に従事しながら落下物を速やかに発見して取り除くことは困難であった。
・レジ前通路に天ぷらのような商品を利用客が落とすことは通常想定し難い。
などと指摘した上で、
「利用客が本件事故現場(レジ前通路)付近に落とした本件天ぷらを短時間放置させたことにつき(中略)安全配慮義務違反があったということはでき」ないとして、被害者の請求を一部認容した原審判決を変更し、店舗側の損害賠償責任を否定しました(逆転判決)。
また、店舗の設置、管理に瑕疵があることによって本件事故が発生したと認めることもできないとして、土地工作物責任も否定しました。